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第11回キュービクル工事雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社キュービクルパートナーズ、更新担当の中西です。

 

~多様化~

電気は現代社会の血流のような存在であり、建物に電力を供給するための「心臓部」ともいえるのがキュービクル(高圧受電設備)です。

かつては、一定の規格に沿って施工・設置する比較的定型的な業務とされていましたが、近年では設置対象・役割・工事内容・技術・人材の面で大きな多様化が進んでいます。

「キュービクル工事における多様化」というテーマを、6つの視点から深く掘り下げてご紹介します。


1. 設置対象の多様化:用途も設置環境も広がる

かつては工場・大型商業施設・ビルなどが主な対象でしたが、近年では設置対象の裾野が大きく広がっています

多様な設置対象例

  • 医療・福祉施設(病院、介護施設)

  • 学校や自治体施設

  • 小規模マンションや集合住宅(高圧一括受電)

  • 道の駅や観光施設

  • 災害避難所に指定された公共空間

  • EV充電設備を備えた商業スペース

  • 再生可能エネルギーの連系地点(太陽光・風力)

これにより、設置環境や求められる仕様が複雑化し、現場ごとのオーダーメイド性が高まっています


2. 機能の多様化:ただの受電設備ではない

キュービクルは「高圧電力を低圧に変圧し供給する装置」という基本機能に加えて、安全性・利便性・環境性能など多機能化が進んでいます。

機能の広がり

  • 自家発電機や非常用発電との連系機能

  • 太陽光・風力発電との接続対応

  • 蓄電池・EVとの双方向給電

  • IoTセンサーによる遠隔監視・異常検知

  • 無人監視・制御盤の設置による自動化

  • BEMS(ビルエネルギー管理システム)との統合

つまり、キュービクルは今や“スマートエネルギー管理の中核装置”へと進化しているのです。


3. 工事内容の多様化:新設・更新・改修・撤去の多軸展開

キュービクル工事といっても、目的や状況によりさまざまな工事形態があります。

  • 新設工事:新築施設・太陽光発電所などへの初設置

  • 更新工事:老朽化による取り替えや定期更新(20~25年目安)

  • 機能増設:EV対応・系統増強・分電盤追加など

  • 撤去工事:施設閉鎖・低圧切替による撤去

  • 仮設工事:イベントや仮設住宅への一時供給対応

これらに応じて、必要な技術・機材・工期・法令対応も変化するため、柔軟な現場対応力と総合的な施工管理能力が求められます。


4. 技術・資材の多様化:省スペース・高効率・環境配慮型へ

現場ニーズの多様化に対応するため、使用される技術・資材・工法にも進化と分化が見られます。

  • コンパクト化・薄型化による狭小地対応

  • アルミ製・ステンレス製の軽量型筐体の採用

  • 低騒音・低振動型トランスによる周辺環境配慮

  • 無停電更新工法による業務継続性の確保

  • 防災・防水・防塵性の強化(津波・大雨・塩害対応)

特に、災害が多い日本では、防災機能やBCP(事業継続計画)を見据えた仕様へのニーズが高まっています。


5. 担い手の多様化:多職種・多資格の連携へ

キュービクル工事には、以下のような複数の技術者・職人が関わるため、多職種・多工程の高度な連携が必要です。

  • 電気工事士(第一種・認定者)

  • 高圧受電設備の設計・施工管理技術者

  • 土木・基礎施工業者

  • 設備機器メーカーとの協力体制

  • 高所・重量物運搬の専門業者

  • 保守点検スタッフや第三者機関(耐圧試験など)

さらに近年では、女性技術者の参入や外国人技能者の活躍も増加しており、チームの多様性も広がっています。


6. 社会背景の変化が生む“新たな需要”

キュービクル工事の多様化を後押ししているのは、社会環境の変化です。

  • 電気代の高騰によるエネルギーマネジメント意識の向上

  • 脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの導入

  • BCP対策や停電リスクの備えとしての更新需要

  • 建築物省エネ法の改正による新基準対応

  • EV社会の到来に向けた充電インフラ整備

これらに対応できるキュービクル工事は、単なる“施工業”を超えた“電力インフラの未来創造業”と呼べるようになってきています。


電気の“受け皿”から、社会を動かすエンジンへ

キュービクルは「高圧受電のための設備」であると同時に、
現代社会の動力源を安全・安定・効率的に流す装置です。

そしてその工事は今、

  • 設置対象が広がり、

  • 機能が拡張し、

  • 工法が進化し、

  • 担い手が多様になり、

  • 社会課題と密接に結びついています。

キュービクル工事の多様化とは、単なる工事手法の進化ではなく、未来の電力社会を形づくる土台づくりそのものなのです。

 

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